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【インタビュー】DVERSE Inc.沼倉正吾氏が語る日本のVRスタートアップが生き残る方法

2017/02/15

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PSVRが発売された2016年。
エンタメばかりが注目されがちなVRですが、普及という課題を解消し切れておらず、いまいち盛り上がりに欠けるような雰囲気もあります。

そんな中でVR技術の需要が高まってきているのがビジネス分野。もちろんこれまでにも様々なVR関連のサービスが立ち上げられてきましたが、日本のスタートアップの数としては少ないのが現状です。

VR techでは建築や土木といった不動産業界に多大な影響をもたらすであろうアプリを開発。さらに1.1億円もの資金調達を実現させたDVERSEの沼倉正吾氏にインタビューを行いました。
沼倉氏が語る今後のVRの未来、そして日本におけるVRスタートアップの可能性とは。

【インタビュー】DVERSE沼倉正吾氏が見るVRの未来とスタートアップ

目指すのは"便利なアプリ"ではなく、人と人を繋げるコミュニケーションツール

-現在VRは、PSVRなどのゲームあるいはアミューズメント、広告などの分野に注目が集まっています。そういった背景がある中で、どうして建築に目をつけられたんでしょうか。

DVERSEは比較的前からVRに注目していて、2013年頃から映像系やエンタメの会社とVRのコンテンツ制作の仕事をしていました。

そういった仕事をしていく中で、VRはエンタメ以外にも様々な用途で使えるなと感じてきたんです。特に建築や土木産業などは、3Dデータとの相性は良いし、現場からのニーズもひしひしと感じていました。

とはいえ、会社としては単なるVRを用いたツールというような形を目指しているわけではないんです。

確かに見た目は、CADデータを用いて3D空間を生成することのできる建築設計アプリケーション。しかし僕たちが開発している技術は将来VR空間の中でのビジネス・コミュニケーションのツールになり得るものだと考えています。

これまでデータとして見ていたものを立体的な空間として作り上げ、その中でイメージ共有やコミュニケーションを取ることで、建築設計などのフローを簡略化する。それはすなわち企業間や個人間のやりとりをより円滑に進めることができるようになるということです。

最終的には物理的な場所は離れていても、バーチャル空間で人が集まり、そこでミーティングや議論などを交わすことができるようにしたいと考えています。

日本にはまだ土壌が育っていない

-シンメトリーのリリース時期などについて教えてください

来年2月にプレビュー機能にフォーカスした『シンメトリーアルファ』、9月にはプロ版のサービスを開始する予定です。

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作り込んだ制作をするにはプロ版の購入が必要になりますが、3DモデルのインポートからVR体験、ミニマムなコミュニケーションまでは『シンメトリーアルファ』で利用できます。デザイナーや建築関係者などのビジネス向けのツールですが、今後は改良を加えデザインに明るくない一般の人々でもプレビューなどを簡単に操作できるユーザーインタフェースにしていくつもりです。

-シンメトリーは欧州やアメリカといった地域に向けて提供していくとアナウンスされていますが、この理由は?

シンメトリーはスケッチアップ(*1)のユーザー向けのツールとしてまずはリリースするんです。世界ではプロ・アマ問わず3000万もの人が利用しているソフトウェアですが、日本では1万人程度です。

スタートアップの会社としてはスケールメリットのある世界の方に目を向けた方がビジネスとして効率的なんですよね。

*1:主に建築などのデザイン工程で利用されている3Dモデリング・ソフトウェア。
【参考】
http://www.alphacox.com/sketchup-pro/function/list-2016/compare/

現状、VRのスタートアップは金と時間が掛かる

-他で気になっているスタートアップなどはありますか?

スタートアップに限らず、同業者は注目していますよ。日本だとライバルみたいな会社はいないですね。現状では同じような事業を行なっているところはないので。

世界の大きいところでいうとAutodeskとかは気になっています。あとはやっぱりMagic Leapですかね。気になるというか、気にせざるを得ない。

-Magic Leapというと、MRの研究で話題の会社ですよね。気になるというと?

DVERSEはARやVRで利用するUI設計をメインにしています。簡単にいえば、これは特許を取る技術を開発しているんです。Magic Leapはこの特許を取りまくっていて、つまり彼らがDVERSEにとって一番のライバルですね。

スタートアップってあんまり特許取らないんですよ。国際特許だと1件辺り100万円以上のお金が掛かるので。VR、ARのスタートアップは特許を取得することがとても重要だと考えています。

ここ6〜7年はソフトウェアの時代でウェブやアプリのサービスを提供するスタートアップがすごい勢いで立ち上げられてきました。ソフトウェアの時代では少ない資金力でなんとか回すことができますが、ハードウェアと密接な関係のあるVR、ARはそうはいかない。現状はお金と時間が掛かるんです。

だからいまの日本でVRのスタートアップを起ち上げてVR、ARの基幹を取り特許を取得していくような資金調達っていうのは、かなり難しいですね。DVERSEが海外で法人を設立したのには、そのような投資市場規模も関係していました。

いまのVRの人気はiPhone発売直後に似ている

-PSVRが発売されましたが、プレイされましたか?

もちろん体験しました。面白かったですよ。これから先、開発者たちがVRというプラットフォームに慣れて革新的なコンテンツを出してくるとは思います。とはいえそれもおそらく2〜3年くらいは掛かるでしょう。

特に今のVRはiPhoneの発売直後の状況と同じなんですよね。当時iPhoneアプリを開発していた会社はほとんどいま生き残っていません。理由は単純でデバイスを持っている人が少なかったから。いまiPhoneのコンテンツでポジションを取っている会社って、そのあとにサービスを立ち上げた会社がほとんどなんです。

それと同じで、いまはだれもVRデバイスを持っていないからスタートアップを立ち上げても全然お金が回らないんですよ。VRのコンテンツを作りたいというのであれば、流行ってからやっても遅くはないと思いますよ。

素敵な勘違いをしよう

-DVERSEはVR事業で1億もの出資を集めた日本では稀な会社です。日本でのVRのスタートアップはいまどういった状況なんでしょうか。

いま起業するとVCや投資家などがお金を出資してくれることは昔に比べると多いんです。しかしVR、ARで起業するとなると普及までまだ時間がかかるので、1000万とか2000万円の出資を集めてコンテンツを作っても収益をあげるのは難しいのではないでしょうか。

個人的には、これからVR、ARのスタートアップを立ち上げようという人たちは、グローバルな市場でポジションを取れるプロダクトや、10年後、20年後にベースとなるような技術やプロダクトを本気で考えた方がいいと思います。

VRのなかでどこを取りに行くかも重要です。スタートアップっていうのは短期間でのすごい成長を遂げなければならない。その中で事業を立ち上げようと考えたときに、多くの人がゲームかコンシューマーのソーシャルサービスなどにいきがちです。これはモバイルやウェブがそうだったからなんですが、VRの場合はまだ状況が違います。モバイル事業と同じように起業してもVRでは普及までもう少し時間がかかるため、まだ難しいとは思います。

-アイデアはあってもお金や時間がかかるとなると気が引けてしまいますね。

でも資金調達って実はものすごくアナログなんですよ。投資する側だって「これすごいんですよ!」って説明されたところで、VRなどの新規のマーケットについては判断が難しいです。じゃあどこで判断するかというと「なんかこいつ面白そうだな」とか「大きなマーケットを狙っているか」とかになります。もちろん他にも様々な要素が絡んでくるとは思いますが、メインは面白いかどうか、大きなマーケットになるかどうかなんですよね。

だから変に焦る必要はないんですよ。たしかにスタートアップって10代20代がゴロゴロいるようなところで、僕なんかは彼らのお父さん世代。僕がスタートアップの勉強を始めたのは4年前なんですが、そのときはほとんど何の知識もない状態でした。資金調達なんてどうやったらいいのかわからないし、VCなんて騙されて身ぐるみはがされるのかな、なんて思っていたくらいです(笑)

でも3〜4年やっていけば、誰でもその道のプロにはなれるんですよね。僕は流行る前からずっとVRについて企業や周囲の人々に語ってきました。そのときはほとんど相手にされませんでしたが、いざVRが流行る兆しが見えて「詳しい人、誰?」となったときに、必ず僕のところに話がくる。誰でもちょっとでも長くやっておけばこれくらいにはなれるんですよ。

ー起業する前にやっておくべきことって、他にどんなことがありますか?

情報を発信し続けるっていうのも重要ですね。情報っていうのは発信する人のところに集まってくるので。あとは人に会って、勘違いすることです。

僕の場合はスタートアップの勉強会や海外のイベントなどに積極的に顔を出していました。いまDVERSEに出資してくれている会社の人とはイベントで会いましたし、そこから繋がって仲良くなって飲んでた人がいま数百億円のバリュエーションの会社を経営していたり。すごい人の周りにいると「あれ、自分もすごい人なんじゃないか?」「僕にもできるんじゃないかな?」っていう勘違いができる。僕はこれを「素敵な勘違い」と呼んでるんですが、けっこうこれがものすごく重要だと思うんです。

いまだったらウェブとかスマホで情報を取得したり配信したり人とつながったりと、やれることはまだまだ残っています。近しい業界に身を置きながらVRの中で何が本当に需要があるのか、自分の考えるプロダクトのどこがコアコンピタンスなのかということをじっくり考え、自分はここを取りに行くというのを決めた方がいいですね。まだまだ全然時間はありますよ。

DVERSE inc.

DVERSE Inc. | 建築土木不動産業界向けのVR ARソフトウェアの開発・販売
http://dverse.me/
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http://www.symmetryvr.com/

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